月明かりをまるで通さず風にも動かないあの雲のように、俺の心は鈍く、雨を落とさない。<
今日は送別会があった。
送るほうも送られるほうもだいたい笑顔で、前向きな、とても良い送別会だったと思う。
そんな中、一人だけ涙ぐんでいる子がいた。ああ、情が深い子なんだなって思いながら、少しだけ複雑な気分になった。
俺の感情は、こんなときに乱れない。
煙草を吸う年になってから、別れの時に泣いたのはたった一度だけ。
だから俺は冷たい心をした人間なんだろう。ずっとそう思っていた。
送別会が終わって職場に戻り、上司と少しだけ話をしてビルを出た。人ごみに溶け込んで、電車に飲み込まれ、東十条で雨の降らない空を見上げる。
六月最後の夜。雨の降らない梅雨の空。
あの真っ暗な空の奥には、きっと分厚い雲がある。
たぶん、冷たいわけじゃなく。
俺の心は鈍いんだろう。
月明かりをまるで通さず風にも動かないあの雲のように、俺の心は鈍く、雨を落とさない。
頭ではわかっていても、心に届くのはとても遅くて。
だから、別れをすぐには実感できない。それが別れだということにさえ、いつもなかなか気づけないんだ。たぶん、冷たいわけじゃなく。

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