私はフンと鼻をならした。なにが台風だという気分である。
今年は例年に比べ、台風が多いと聞いた。
……フン。なにが台風だ。
私は世の中で「風」がつくものほど、いい加減なものはないと思っている。
たとえば「和風」、「洋風」だ。和風はあくまで和風であって「和」ではないし、洋風は洋風であって「洋」そのものではない。「カントリー風」は、田舎でなく都会でよく見かける建物だ。
そういえば、私がまだ地元である高知にいたころ働いていたお菓子会社では、「手作りクッキー」なるものを販売していた。
そう。お察しのとおり、実際には手作りではないのだ。純真無垢だった私は
「え、手作りじゃないんですか? 『手作りクッキー』って書いてあるのに手作りじゃないんですか?」
と質問したものだった。
「流れ作業で大量生産だよ。ほら、ここに『風』って書いてあるだろ?」
と工場長は事も無げに答えると、クッキー詰め合わせ箱の一点を指差した。
指差した箇所は「手作り」という文字と「クッキー」という文字の間で、そこにはひときわちっちゃな文字で「風」と書かれてあった。なるほど。商売というものを初めて知ったような気がした瞬間だった。
つまり私が言いたいのは、「風」がつくということは、間違いなくその前の文字を否定しているのだということである。「和風」は結局「和」ではない。「手作り風」は、工場の流れ作業を指す。
ならば台風のなにを恐れることがあるだろう。台風が来たといっても結局は「台」そのものではありはしない。それを証拠に、テーブルなんてどこからも飛んで来ないじゃないか。「風」がつくものなんて、所詮そんなものなのである。
とか言ってたら、私の生まれ故郷高知を、先日台風が直撃したとニュースでやっていた。「テーブル飛んできた?」電話の向こうの母にふざけてそう言うと、えらい怒られた。どうやら実家はてんやわんやだったらしい。
ニュースでも、立派な木が突風になぎ倒されている場面をスクープしていた。車も横倒しで、店のカンバンも吹っ飛んでいた。かくゆう私もこの前停電に見舞われて、パソコンの更新中のデータが吹っ飛んだ。なんということだ、台風の猛威とはこんなにもすさまじいものなのか!
結局、「風」がつくからと言ってそう舐めたものでもないらしい。告白すると、和風ハンバーグも欧風カレーも私の大好物だし、あの手作り風クッキーもベリーデリシャスだった。カントリー風の建物も、都会に疲れている私にとってはひと時のオアシスなのである。
どうやら私こそが、知った風な口をきいてしまっていたようだ。

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